2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

領空侵犯

わざとむしらずにおいた半野生化した朝顔が、庭の裏手の植木を伝って知らないうちに隣家の梅に絡んでいた。うちの木と違って整然と剪定された年季の入った枝で、誇らしげに咲いているさまを見て「うちの子がどうも…」と申し訳ないようないじらしいような。 …

日陰の花

駐車場に車を入れていると視界の端に白いものがうつる。車を停めてから白いものが見えたボイラーの下を覗き込むと、窮屈そうに茎を折り曲げた百合の花が、付け根から花びらが朽ちた状態でいましも枯れんとするところなのだった。 ボイラーの横、焼けこげそう…

短歌日記 里帰り

浴槽に沈む緑の丸い球ぬるいぶんだけあまいよお食べ 「クワガタのエサのゼリーを買わなくちゃ」どこから訂正すべきか迷う

はるかにのぞむ光の噴水

クーラーで冷え切った身体を、昼間の余熱がのこる車内の空気に浸して高速道路を走っていると、まっすぐ伸びた車線の向こうに小さく小さく光の柱が噴き出すのが見えた。 花火って遠くから観るとこんな風に見えるのかと思いながら、それが子どもの頃やった、据…

にじゅうしのひとみ

恒例の夏の宴の真ん中に座らせて、あれを食べろ、もっと皿を近づけろ、スプーンの方がいいか、暑くはないか、麦茶はいらないか、疲れたか、眠くはないか、と一同注視にとどまらず、代わる代わる口と手とを出すので、たぶん祖父本人は個体識別もできずに疲れ…