2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧
朝起きてぼんやりCDを聴いていると、音のあいまにウグイスの声がしたような気がした。まさかこんな時期に、と思っているうちにまた聞こえて、あわててステレオの停止ボタンを押す。ほてちょ、ふてちょ、と相当にたどたどしいながら、てちょてちょてちょと谷…
昼すぎ、雨に白いものがまじりはじめた。ゴルフボールほどの大粒の綿雪が、細かい雨のあいだをことさらゆっくりと舞い降りてくる。それが天から放られた白球のようで、窓ごしに軌跡をつい目で追ってしまう。 みぞれは半日降りつづき、仕事を終えて駐車場まで…
季節はずれの生ぬるい風をほほに感じながら日の落ちた廊下を行くと、曇りガラスにうつる非常ベルの赤ランプが、白濁した水の中からこちらを見つめる未知の生物の瞳に見える。
放射冷却でくっきりと冷えこんだ朝、このあいだの雪の残りが朝日をうけて鱗粉をまぶしたように光っている。歩くにつれてこまかな光は丸みをおびた表面をなめらかに流れ、雪塊が動いているような錯覚におちいる。むかし佐渡で買った石がたしかこんな光りかた…
赤いポリタンクは季節によって違うものに見える。両腕に下げてバランスを取りながら階段をのぼり、とろとろと朱色の炎をゆらしている黒い鉄製のストーブにたどり着いたら、まずかじかんだ手をあぶる。感覚が戻ったら給油口のふたを取り、ポリタンクを傾けて…
雪のきざしをたたえた空は、戦時中黒くした塗壁を、上からまた白く塗り直した色をしている。窓から駐車場がまだらにみえたので、早々にまいた塩カルが溶けて乾いたのかと思ったら、目にとまらないくらい細かな粉雪が、音もなく降っているのだった。風がない…