2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧
夕暮れのうす闇の窓に、逆三角形の半透明のボタンがついている、と思ったのは、向かい側のドアの飾り窓からもれる明かりの反映だった。ガラスごしに、下の通りでバスを待つ人たちの列が透けて見えている。 対になるはずの上りのボタンがない、たったひとつだ…
昼下がりの印刷室に人の姿はなく、ただ1台だけ印刷機が淡々と動いていた。のこりの2台のスイッチを入れて印刷をはじめると、それぞれ微妙に異なるリズムで紙をはき出す音がからまりあって、前衛的な打楽器アンサンブルを思わせる。
長いこと放置されて少したるんだゴム風船におっかなびっくりはさみを入れると、案に反して破裂はしなかった。ぱっくりと開いた切り口からスローモーションで空気が抜けていき、それから一拍おいて火にあぶられたラップのようにくしゃくしゃと縮まっていく。…