2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

車窓

遠くに見える山はいつまでもそこにあって、もうすこしこちらのビル、まばらな木立、その手前の家、眼前の電信柱と、順にスピードを増していく。左に大きくカーブする軌道上、巨大な円盤の縁にたって、それが猛スピードで回転するさまを見ている錯覚にとらわ…

相似形

のりづけされた針をバネの力で打ち込み口へおくる大型ホチキスの機構は、銃器のそれを連想させる。いつ果てるとも知れない書類の束をガッシャンガッシャンと無心に綴じつづけるうち、針がきれるや「弾ください!」と口走っていた。

同じ雪

季節はずれの本格的な降雪で、高速道路は事故やらチェーン規制やら通行止めやらでひどく渋滞している。 前にすすめず後ろにも退けず、つれづれにヒーターに曇った窓を指先でぬぐうと、はるか高架下に俯瞰する空き地で、子どもたちが背丈ほどもある巨大な雪玉…

春のきびす

あまりにも陽ざしがあたたかなのでストーブを消すと、コツコツと鉄が冷えていく音のなかに春が来ている。