2011-01-01から1年間の記事一覧
リンドウは陽にあててやらないと花がひらかない。 朝、白い一輪挿しに活けた枝を窓ぎわの日なたに出してやり、錐状のつぼみが藍色にほころぶのを待って食卓に飾りなおす。閉じては開き、開いては閉じるのを幾日か繰りかえすうち、深緑の葉の縁が赤茶けて、い…
白壁と天井の化粧板の境目近く、あんな所に額を掛けるハンガービスがあったかなと眺めていると、それは陽気に誘われて出てきたシジミ蝶なのだった。
谷間を南へ流れくだる川にかかる橋から、下流をみやると、きのう降った雪がかわらの石の輪郭で溶け残っている。 視線を川上に転じれば、見わたすかぎりの雪は溶け、黒々とかわいた石がいつものように続いていた。 ドウダンツツジの一株ごと北側に丸く溶け残…
車がなくても当面の日常生活に支障はないけれど、何かをしようと思ったときにそれを成し遂げるための手数や時間が格段に増えるので、何かを思いたってはそのたびにガラスの天井に頭をぶつけているような日々が続く。 何百万というお金を払って買っているのは…
しばらくは抜け道のない谷間の道で自然渋滞につかまってしまった。あきらめの息を吐いて、シートにもたれ、ワイパーを止める。 十分にあたたまったフロントガラスに、おりからの淡雪が降りかかってはほろりと砕け、砕けては溶ける。舌先にほどける綿あめを思…
近所の花屋の店先で笑顔を振りまいていた恰幅のよいサンタクロースが、福々しいシルエットはそのままに、大福餅のような白うさぎに変身していた。