先導者

ふもとでは舞う程度だった雪が、峠にさしかかるとヘッドライトを照り返すくらいの厚みになって道を覆っていた。通い慣れた道が見知らぬ場所に見えてくる。前にも後ろにも他の車は見えない。ギアをセカンドに入れて下りにかかると、高速回転するエンジンがステレオの音をかき消した。ブレーキを踏めない足のやり場に困る。
しばらく下ると、ハザードをたいてゆっくりと先を行く大型作業車に追いついた。凍結防止剤を撒いているらしい。プロのペースメーカーを得たのを幸いにそのままふもとまで追走し、ようやく最初の信号機を目にして肩の力が抜けた。
そこまでたどり着いたのを見届けるように、作業車は赤信号の向こうでUターンして峠へと戻っていった。すれ違うとき、あられのような塩化カルシウムの粒が窓ガラスをうった。