坂のおわり

目がうるむのは香の煙がしみるからで、ながいながい下り坂をゆっくりと遠ざかっていく後ろ姿を見送っていた身には、いつが別れの時だったのかさだかではない。
見送る側が納得するまで、辛抱づよくつきあってくれたその背中が見えなくなってようやく、手を引かれて上り坂を歩いていたころのことを、今と比べることなく思い出せている。