短歌日記:花と人と

うっかりしているうちにラベンダーの花が開いてしまったので、ポプリに加工するのはあきらめて全部刈り取る。樹形が乱れ放題なので、この辺でリセットを目指して枝もごっそり切り尽くし、株を丸坊主にする。うろうろと寄ってきた蚊がラベンダーの香りにひるんだような気がしたので、後で調べてみるとそういう効果もあるらしい。
昔は生きた花を切り取るのはかわいそうで気が引けたものだけれど、自分で世話をはじめてからは花瓶に飾られて誰かに褒めそやされるのもまた晴れがましいことと実感している。今の私の腕だとほとんど花が勝手に咲いてくれるようなものなので、誰かに「きれいだね」と言われることで花の苦労に報いてやったような気になる。
そこでようやくニュアンスがわかるようになったのが下記の二首。花に限らず美しいものを一人でみると誰かと分かち合いたくなって、自分の孤独がことさらに意識されるけれど、一人であることには単なるさびしさだけではなくて他人の評価を欲しない一種の清浄な境地があるのだと思う。

  • もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし 前大僧正行尊
  • だれからも愛されないということの自由きままを誇りつつ咲け 枡野浩一
  • 手折られし花を愛でつつ愛されぬ人の孤高をあおぎ見る夏