はつ霜

朝未き、皮膚にはりつくようなノブをまわして外へ出ると、欠けはじめた月が西の空に切り絵のシャープさで浮かんでいた。周囲にちりばめられたオリオン、おおいぬ座に北斗七星、冬の大三角が、歩くにつれ東からだんだん明るむ空にとけていく。地の暗みにはほの白く霜。枯れ草の下から生いでたオオイヌノフグリに白いレースの縁取りがほどこされて、こわばった腱をのばそうと鉄棒をつかめば、薄氷がてのひらの熱で溶けた。